階段を使う習慣は本当に役立つ? 特別な運動時間を増やさず活動量を上げるコツ
階段を使う習慣は、わざわざ運動の時間を取りにくい人でも、日常の活動量を増やしやすい方法です。厚生労働省は、通勤や家事のような「生活活動」も身体活動に含めており、階段の上り下りもその一例に入れています。
大事なのは、気合いで毎回階段を選ぶことではありません。通勤先の1フロア分、駅の短い階段、昼休みの移動など、使う場面を先に決めておくと続きやすくなります。
- 今日から始めるなら「1日1回だけ階段」を目安にする
- まずは上りだけ階段、下りや長い移動は無理しない
- 息切れ、膝や足首の痛み、ふらつきがある日はエレベーターを使う
まず意識したい結論は「運動不足の穴埋め」ではなく「生活活動の上乗せ」
階段習慣の強みは、特別な道具も予約もいらず、移動のついでに入れやすいことです。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、身体活動を「安静にしている状態より多くのエネルギーを消費するすべての動作」と説明しています。さらに、身体活動の中には運動だけでなく、通勤、家事、仕事中の移動、階段昇降のような生活活動も含まれます。
つまり、階段を使う習慣は「運動していない日だから意味がない」のではなく、普段の生活に身体活動を足す行動として考えるのが実際的です。
ここがポイント: 階段は「運動できない日の代用品」ではなく、毎日の移動を少し活動的に変えるための手段です。
なぜ階段が話題になるのか
忙しい人ほど、運動の課題は「やる気」より先に「時間」です。30分の散歩やジム通いが難しいと、身体を動かす機会そのものが減りやすくなります。
その点、階段は次のような場面に入り込みやすいのが特徴です。
- 職場や商業施設での短い上下移動
- 駅や地下道の出入口
- マンションやオフィスの1から2フロア移動
- エスカレーター待ちが長い時間帯
CDCも、階段を使うことは日中の身体活動を増やすよい方法だと案内しています。さらに、身体活動は長時間まとめて行うだけでなく、日中の小さな積み上げでも増やしていけると示しています。
なぜそれが大切か
目安は「今より少し多く動く」こと
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版では、個人差を踏まえつつ、今より少しでも多く身体を動かすことをまず勧めています。そのうえで、歩行またはそれと同等以上の強さの身体活動を1日60分以上行うことを推奨しています。
高齢者版でも、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないことに注意しながら、毎日40分以上の身体活動を目安にしています。ここで言う身体活動は、スポーツだけではありません。日常動作も含みます。
階段は歩行より負荷を上げやすい
e-ヘルスネットのMETs解説では、歩く・掃除機をかけるなどは3METs程度、階段をゆっくり上るのは4METs程度とされています。平地をだらだら歩くより、短時間で息が弾みやすいのが階段の特徴です。
もちろん、同じ階段でも強さは人によって違います。CDCは運動強度の目安として、
- 中強度: 会話はできるが歌うのは難しい
- 高強度: 数語話すごとに息継ぎが必要
という「トークテスト」を紹介しています。階段ではこの差が出やすいので、無理に速く上る必要はありません。
週の目安に近づける助けになる
WHOは成人に対して、週150から300分の中強度の身体活動、またはそれと同等の活動量を勧めています。毎日まとまった運動時間を確保しにくい人にとって、階段はこの目安に近づくための補助線になります。
ただし、階段だけで全部を満たそうと考える必要はありません。歩行、買い物、家事、立ち仕事などと合わせて考えるほうが現実的です。
今日からできる階段習慣の作り方
ここは一気に増やすより、場面を固定するほうがうまくいきます。
1. 使う場面を先に決める
「できたら階段」だと、疲れた日に消えやすくなります。先にルールを決めます。
- 出勤時は1回だけ階段を使う
- 2フロア以内は階段を選ぶ
- 駅では上りだけ階段にする
- 昼食後の移動だけ階段にする
このくらい具体的だと、判断の手間が減ります。
2. 最初は「上りだけ」で十分
階段は下りのほうが膝に負担を感じる人もいます。特に始めたばかりなら、上りだけ階段にして、下りはエレベーターやエスカレーターでも構いません。
続かなければ意味がないので、負荷より継続を優先したほうが結果的に活動量は増えます。
3. 1回の量より回数を増やす
いきなり10階分を目指す必要はありません。1から2フロアを日に数回のほうが、生活に埋め込みやすい場合があります。
たとえばこんな形です。
- 朝: 駅の短い階段を使う
- 昼: 1フロア上の売店まで階段で行く
- 夕方: 退勤前に1回だけ階段を使う
小さく分けると、息が上がりすぎず、服装や汗の問題も出にくくなります。
4. 息の上がり方で調整する
階段は短くても負荷が上がりやすいので、速さを固定しないことが大切です。
判断の目安は次の通りです。
- 会話できる程度なら、そのペースを維持する
- 太ももが重い、息が荒すぎるなら、手前の階でやめる
- 荷物が重い日は回数を減らす
- 寝不足や疲労感が強い日は無理に使わない
階段とほかの増やし方をどう使い分けるか
階段だけにこだわる必要はありません。続けやすさは人によって違います。
| 方法 | 続けやすさ | 取り入れやすさ | 向いている人 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 階段を使う | 移動に組み込めれば高い | 職場・駅・自宅環境が合えば始めやすい | 運動時間を取りにくい人 | 膝痛、息切れ、荷物が多い日は無理しない |
| 少し速めに歩く | 高い | 特別な設備がいらない | 屋外移動が多い人 | 天候や靴の影響を受けやすい |
| 座り時間を切って立つ | かなり高い | 在宅勤務でもやりやすい | 長時間座りがちな人 | 活動強度は高くなりにくい |
階段の良さは、短時間でも「今日は少し動いた」が作りやすいことです。一方で、脚や関節に不安がある人は、速歩や立ち時間の増加のほうが合うこともあります。
続けるコツは「気合い」より環境づくり
習慣化の成否は、意思の強さより、選びやすい状況を作れるかでかなり変わります。
迷わない導線を作る
- エレベーター前で考えないよう「2階までなら階段」と決める
- 通る階段を固定する
- すべりにくい靴の日に優先して使う
- スマホのメモや歩数アプリで回数だけ記録する
成功条件を低くする
「毎回階段」は失敗しやすい設定です。代わりに、
- 平日は1日1回で達成
- 疲れている日は半分で達成
- 雨の日や荷物が多い日は対象外
としておくと、途切れにくくなります。
座りっぱなし対策と組み合わせる
厚生労働省も座りっぱなしの時間が長くなりすぎないよう注意を促しています。階段習慣は、座位時間を切るきっかけにもなります。
- 会議や作業の区切りで立つ
- 別フロアのトイレや給水に歩いて行く
- 在宅でも、家の中の上下移動を1回増やす
注意点と無理しない線引き
階段は便利ですが、誰にでも同じ形で勧められるわけではありません。
こんなときは控えめに
- 膝、股関節、足首に痛みがある
- 強い疲労感やめまいがある
- 息苦しさ、胸の痛み、動悸が出る
- 妊娠中、持病がある、服薬中、医師から運動制限を受けている
こうした場合は、自己判断で階段量を増やさず、必要に応じて医師など専門家に相談してください。
安全面も見落とさない
- 段差が見えにくい場所では手すりを使う
- すべりやすい靴、急ぎ足、ながらスマホを避ける
- 重い荷物や片手がふさがる日は無理をしない
健康習慣は、続くことと同じくらい、けがをしないことが重要です。
まとめ
階段を使う習慣は、特別な運動時間がなくても活動量を増やしやすい、現実的な方法です。ポイントは、がんばって毎回選ぶことではなく、使う場面を先に決めて小さく続けることにあります。
最後に、始めるならこの3つで十分です。
- 1日1回だけ階段を使う場面を決める
- 最初は1から2フロア、上り中心にする
- 疲れ、痛み、息切れが強い日は無理をしない
「運動する日」を増やせなくても、「動く回数」は増やせます。まずは明日の移動の中で、どの1回を階段に変えるかを決めるところから始めるのが近道です。
参照リンク
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 身体活動
- 厚生労働省 e-ヘルスネット メッツ / METs
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:成人版
- 厚生労働省 e-ヘルスネット 「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」推奨シート:高齢者版
- 厚生労働省 階段利用キャンペーンについて
- WHO Physical activity
- CDC Adult Activity: An Overview
- CDC Moving Matters for My Health
- CDC Prompts to Encourage Physical Activity: Stairwell Ideas
- CDC How to Measure Physical Activity Intensity
